仰向けに寝ている俺に覆い被さるように、能天気な幼なじみが馬乗りになっている。
「倫かよ……食ったもん全部出るかと思ったわ……」
本当にこいつは、突然やって来たかと思えば強引にべたべたしてくる。年頃の女の子がやることじゃねーだろ。分かってんのかな。
「なにしに来たんだよ」
「ひかるに会いに来たっ。そしたら試合勝ったってマキちゃんが教えてくれたっ。おめでとー!」
「おー、ありがとー」
ちなみにマキちゃんってのはうちの母親。
「倫、週末は塾だから見に行けないけど、次もがんばってね! 次勝ったら全国大会なんでしょお?」
「んーそう。ありがとな。おまえも勉強がんばれよ」
「がんばるー! けど倫、北高受けることになるかも……」
「えっ、マジで?」
倫があからさまにしゅんとした。こいつが落ち込んでいるところはあまり見たことがないので、こんな顔はちょっと新鮮だ。
俺や晶が通っているのは西高。北高は、受験の難易度的な意味ではうちの1ランク下の高校で、女の子がかわいいってので有名だ。まあ、俺的には制服のセーラーのせいなんじゃねーかと思うが。
「ひかるといっしょの学校行きたかったー……」
「西は受けねーの?」
「学校の先生も、塾の先生も、100%落ちるからやめろって」
「ふうん。シビアなんだな」
そういや、俺も受験生のころはさんざん落ちる落ちるって言われていた。それでも結局西を受けて、ぎりぎりではあるが受かったんだけどな。
倫が本気で落ち込んでいる。晶にしろ、倫にしろ、いつもうるせーだけのやつが元気ないと、なんかきもちわりいよ。