マドレーヌは結局、自室に持って帰って自分で食った。甘ったるくてバターくさい、いかにも晶の好きそうなやつだと思った。
そのままベッドに身を投げ出すと、まぶたが物凄い勢いで落ちてくる。
疲れた。試合、負けるかと思った。相手も、やっぱり準決勝まで勝ち残ってきているだけあって、そう簡単には勝たせねえぞって気迫が凄まじかった。
それに、身長もでっかいのばかりがそろっていたし。
「あー……あと3センチ伸びねえかな」
まさか172センチで止まるとは思っていなかった。
いや、べつに止まったなんて思ってねーけど。まだ成長期だし、あと3センチくらいは伸びてくれるって信じてるけど。
うちは父親の背が高く、母親の背が低い。
晶は、顔も性格も、そして身長も、完全に父親似だ。164センチは女子にしては大きいほうだろう。胸はないけどすらっとしていて、下っ腹の肉以外は正直デブだなんて思っていない。
対する俺は、顔も性格も、身長も。見事に母さんに似てしまった。身長の低い女はかわいくていいと思うが、男はそうもいかない。身長が低くて得することなんかひとつもねーよ。
それがバスケ部だと、なおさらだ。
まぶたが重たい。
そっと目を閉じると、身体がぐわっとベッドに飲み込まれる感じがした。眠てえ。そういや、あしたまでの課題、なんもやってねえな。
「――ひーかーるっ」
「うおっ」
本当に身体がベッドにめり込んだかと思った。目を開けると、すぐ近くに見慣れた顔があって、一気に目が覚めた。