俺たち姉弟の部屋は、晶が小学校に上がると同時にふたつになった。でも隣どうし、壁は薄いので、正直あまりプライバシーはない。だから、男子特有のそういうサイトとかは、きちんとイヤホンで視聴している。
「――あきらー」
あ、やべ。またノックすんの忘れちまった。
勝手にドアを開けると姉はぎゃあぎゃあうるせーけど、これといってまずい現場に遭遇したことはない。一度だけ着替え中にやっちまったことはあるけど。まあぶっちゃけ、照れとか焦りより先に、萎えた。ちなみに晶はブチギレて目覚まし時計をぶん投げてきやがった。
「……晶? あれ、寝てんの?」
おかしい。普段は鬱陶しいだけなのに、いざいつもの文句が飛んでこないと、変な感じだ。
「……ひ、ひかる」
名前を呼ばれると同時に、ベッドの上のもっこりした掛け布団がもぞもぞと動いて。先っちょから姉の情けない顔がぴょこっと出てきたので、ちょっと笑った。
いや、なにしてんだよ。
「どうしたんだよ、きもちわりいな。健悟さんに送ってもらったんじゃねーの?」
「燿、どうしよう……」
なんてこった。いつもは暴力的で口うるせーくせに。調子狂うじゃん。声が小さいし、眉は下がっているし。
ぱくぱくとくちびるが動いたので、ベッドのすぐ横まで移動して耳を澄ませる。マドレーヌは枕元に置いてやった。
「……先輩に告白しちゃった」
「え?」
「だ、だから……水谷先輩に、好きと。ついに言ってしまいました……」
「えっ!?」
それってつまりそういうことかよ、マジかよ、ねーちゃん!