・・・
家に帰ると、母さんのオムライスが迎えてくれた。うちのオムライスはバターライスで、すごく美味い。
晶はケチャップライスにしてほしいと言うけれど。どうしてもトマトってダメなんだよな。だからケチャップも、トマトピューレも、トマトジュースも、とにかくトマト系のもの全般がダメだ。人間の食いもんじゃねえよ。
あの酸っぱいのか甘いのかよく分かんねえ味とか、口のなか侵略してくるどろっとした液体とか、思い浮かべるだけで鳥肌もんだ。
夕食を終え、風呂も終え。そこでやっと、ソファに姉がいないことに気付いた。いつも部屋の主のようにそこでふんぞり返っているそれがいないのは、なんだか変な感じだ。
「晶は?」
風呂から上がるなり母さんにそう訊いてみると、彼女はあしたの弁当の下準備をしながら、「ああ」と声を漏らした。
「きょうあの子ちょっとおかしいのよね。夕食にもまったく手付けなかったし、帰ってくるなりすぐお風呂入って、ずーっと部屋にこもってるの」
「は? なんで?」
「知らないわよー。なんにも言わないんだもん。晶って昔から自分のこと話さないから困っちゃうよねえ」
ふうん、とてきとうな相槌を打つ。水を飲もうと冷蔵庫を開けると、そこには晶の分であろうオムライスがラップされた状態で置いてあった。
「……あいつさあ」
「ん?」
「きょう、なんか知らねーけど泣いてたんだよなー」
「うそ! 晶が? 見間違いじゃない?」
「ちげーよ。俺もびっくりしたもん」
やっぱりなんかちょっと気になる。さすがにきょうはハーゲンダッツは無いけど、なんか甘いもんでも持っていってやろうか。
冷蔵庫のなかにかわいい箱があったのでそれを選んだ。マドレーヌだ。どうやら父さんが職場のひとに貰ったものらしい。
家に帰ると、母さんのオムライスが迎えてくれた。うちのオムライスはバターライスで、すごく美味い。
晶はケチャップライスにしてほしいと言うけれど。どうしてもトマトってダメなんだよな。だからケチャップも、トマトピューレも、トマトジュースも、とにかくトマト系のもの全般がダメだ。人間の食いもんじゃねえよ。
あの酸っぱいのか甘いのかよく分かんねえ味とか、口のなか侵略してくるどろっとした液体とか、思い浮かべるだけで鳥肌もんだ。
夕食を終え、風呂も終え。そこでやっと、ソファに姉がいないことに気付いた。いつも部屋の主のようにそこでふんぞり返っているそれがいないのは、なんだか変な感じだ。
「晶は?」
風呂から上がるなり母さんにそう訊いてみると、彼女はあしたの弁当の下準備をしながら、「ああ」と声を漏らした。
「きょうあの子ちょっとおかしいのよね。夕食にもまったく手付けなかったし、帰ってくるなりすぐお風呂入って、ずーっと部屋にこもってるの」
「は? なんで?」
「知らないわよー。なんにも言わないんだもん。晶って昔から自分のこと話さないから困っちゃうよねえ」
ふうん、とてきとうな相槌を打つ。水を飲もうと冷蔵庫を開けると、そこには晶の分であろうオムライスがラップされた状態で置いてあった。
「……あいつさあ」
「ん?」
「きょう、なんか知らねーけど泣いてたんだよなー」
「うそ! 晶が? 見間違いじゃない?」
「ちげーよ。俺もびっくりしたもん」
やっぱりなんかちょっと気になる。さすがにきょうはハーゲンダッツは無いけど、なんか甘いもんでも持っていってやろうか。
冷蔵庫のなかにかわいい箱があったのでそれを選んだ。マドレーヌだ。どうやら父さんが職場のひとに貰ったものらしい。