全身の意識が口元に集中して、ゆりあが僕にキスをした瞬間観覧車がわずかに傾いたことにも気がつかないほど、僕の神経はゆりあに向いている。
そっと目を開けたきみは、もう笑ってはいない。
何かにすがるように切なく、蛹が蝶へ生まれ変わるように美しく、夕日に染められた海のようにきれいだった。
──ゆりあ、ゆりあ、ゆりあ。
体がきみを求め、声にすらならないほどの想いを叫んでいる。
僕は思いのまま、隣に腰かけたきみに口付けた。
今度は僕からきみに、愛を込めた口付けを送ろう。
伝わるように、僕のこの言葉にならない気持ちを余すことなく伝えられるように。
そっと目を閉じて、きみの温もりを感じる。
背中に回ったきみの手が、シャツをくしゃりと掴む。
時間にすればきっと5秒。
けれど僕にとっては数分にも感じられるような、長い長い時間だった。
幸せで、暖かくて、じんわりと泣きたくなるような、不思議な気持ち。
ふたりはどちらからともなくそっと離れる。
額と額を合わせると、お互いの頬に手をあて微笑みあった。
「……もう、優太のばか」
きみが笑う。
真っ赤に染まる壮大な景色を背に、愛しいきみが笑う。
世界が一瞬にして輝いた。
「優太がいると、ほっとするね。なんていえばいいのかな。優太が私のそばにいるだけで、私はずっと笑っていられる」
肩にかかる重み。