ゆりあは外の景色を見ながら、きれいだとかすごいだとか思ったことをそのまま口に出していて、それを見ていたら面白くてゆりあにばれないように笑いながら一人思う。
きみと観覧車に乗れてよかったなと。
僕もゆりあと同じように外を見てみる。
──そこは、まるで別世界のようだった。
広がる景色は、僕の心をあっという間に拐う。
午後7時前。
青々と煌めいていた海は夕日の色を映して濃い茜色に変わり、地平線の向こう側ではその茜色がぼんやりと揺れている。
海と空の境界線が茜色でつながれ、とてもきれいな景色を作り出していて。
少し薄暗いけれど赤い空にぼんやりと浮かぶ白い星々。
茜色を映し出した海。
壮大な景色を生みだしながら沈みゆく夕日。
その世界の中を自由に泳ぐ鳥たち。
全てが絶妙に交わっていて、こんなにもきれいで美しい世界を作り出している。
この世界はなんて素敵な世界なのだろう。
地上に降りてみればそこは汚れているものばかりかもしれない。
僕たちの生きている世界は、許せないほど残虐なことや理不尽なことで溢れ返っている。
──けれど、僕たちはこんなにもきれいな世界を生きているんだ。
この世界は、こんなにも美しく輝いている。
「……優太」
観覧車が頂上にまもなくたどり着こうとしていたとき、無言だったゴンドラ内に小さな声が響いた。