乗りたいと笑顔で告げられた言葉に、嫌だと首を横に振ることができなくて、というかきみの願いを断ることができなくて、僕は微笑んでいいよと言った。
そうしたらきみは目を宝石のごとく輝かせて、ありがとうと愛おしい笑顔を見せてくれた。
だからいいかなあって、そう思ってしまう僕はゆりあのことがとてもとても大好きなのだろう。
「……お客さま、お一人様でよろしいでしょうか?」
観覧車に乗ることになった成り行きをぼんやりと考えていると、いつの間にか回ってきていた順番。
そうか、このお姉さんからもゆりあの姿は見えていないのか。
チラッとゆりあに視線を向けると、ゆりあは僕をジーっと見つめていて。
何も言おうとしない僕を急かすように、はやく、と声を出さず口だけを動かす。
僕はそれを受けてこくりと頷く。
「はい、一人でお願いします」
「お一人様ですね。ではこちらにお乗りください。足下お気をつけくださいね」
案内されたのは、淡い水色のゴンドラ。
薄く透明なようでどこか深みの感じられるブルーで色づけられたゴンドラは、僕たちが再会したあの海によく似ている。
先にゆりあが乗り込んだのを見届けると、それに続くように僕もゴンドラに足を踏み入れ、ゆりあが座っているのと反対側に腰かけた。
「では、楽しんでいってらっしゃいませ」
営業スマイルを浮かべたお姉さんが手を振っていたからそれににこりと微笑むと、視線をゆりあがいる前に移した。