ゆりあは僕を見上げたまま、ふふっと笑ってまぶたを伏せた。


──優太に恋をしてよかった。一生分の恋を優太に捧げられて、本当によかった。……あ、これは伝えなくていいよ。優太だけに知っててほしいから。


伏せたまぶたを再びあげていたずらに笑ったきみの瞳の奥に、僕の顔が映る。


……僕はとても、泣きそうな顔をしていた。


それはもう、少し気を抜いてしまえば涙がほろりと流れてしまいそうなほど、泣きそうな、そんな顔。


そんな僕を見てきみは微笑むだけで、その眼差しが優しくて。


ゆりあはまたおじさんとおばさんに目を向けると、笑顔を浮かべてふたりに歩み寄る。


ゆっくり、ゆっくり、一歩ずつ。


笑っているゆりあとは正反対に酷く切なそうな顔をしたおじさんとおばさんは、ゆりあに目をやることなく僕をただじいっと見つめる。


ゆりあの姿はふたりから見えないのだからそれは当たり前なのだけれど、今の僕にとってはとても悲しい光景だった。


──優太。


両親の前に立ったきみは、僕の方を振り向くことなく僕の名前だけを呼んだ。


──最後に、お父さんとお母さんに伝えてね。


ねぇ、ゆりあ。


きみはいつの間にそんなにも強くなった?


きみが真っ直ぐで優しい女の子だとは知っていたけれど、こんなにも強くしっかりとした女の子だとは知らなかった。