話す口を止めないきみの言葉を、僕は聞き逃さないようにおじさんとおばさんに伝え続けた。
──お願いだから、そんなに悲しい顔をしないで。自分を責めて泣いたりしないで。……私の代わりに自分が、なんて言わないでよ。そんなことを言っているのを聞くほうが、何よりもつらいから。
きみの声は透き通っていて、それでいて真っ直ぐだった。
──それにね、お母さん。私、幸せだったんだよ。後悔がないなんて言ったら嘘になるけど。でもね、私は幸せ。お父さんとお母さんの子どもに生まれてくることができたから。この世界に生を受けて、17年間、生きることができたから。
僕はゆりあの言葉を両親に伝えながら、きみの横顔を見る。
あまりにも、きみがあまりにも幸せそうに笑っているから、僕のほうが泣いてしまいそうになるじゃないか。
──恋愛だって、することができたよ。結婚や子どもはできなかったけど、それでもね。私は大切な人と出会い、恋をして、愛されることの喜びを知ることができた。大好きな優太と、たくさんの思い出を作ることができた。優太はたくさんの愛を私にくれたからね、私は満足してるの。
きみは僕を見て、笑う。
喉が焼けるように痛くて言葉がでてこない。
なんて伝えればいいのだろう。
言葉につまった僕に、きみは言う。
──優太、早く伝えてよ。
笑ったきみが、僕の左手を優しくとった。
ああ、きみの手だ。
不思議なものだ、ゆりあの手の温もりに触れただけでこんなにも僕も胸の痛みが薄れていくのだから。
自分でこんなことを口にするのは恥ずかしかったけれど、僕はゆりあの言ったことをあくまで僕が言っているように上手く言い換えて、ご両親に伝える。
満足したように頷くゆりあ。