僕はゆりあの言ったことを何一つあり余すことなくゆりあの両親に伝える。


「おじさん、おばさん。今から僕が言うことは、ゆりあがお二人に伝えたいことだと思ってください。確かに僕はお二人ほど彼女のことを知りません。けれど、彼女の気持ちは分かるような気がするんです。彼女はとても優しい女の子でした。だからそんな彼女なら、こう言うんではないかって」


おじさんとおばさんは立ったままの僕を見上げ、生唾を飲み込む。


その拍子に喉仏が蠕動し、表情が僅かに強張った。


「彼女の気持ちだと思って、聞いてください」


頭を下げた僕の横で、両親から決して見えやしないのにゆりあも一緒に頭を下げる。


そうして頭を上げた僕たちは、ゆりあの両親に思いの丈を一言一句伝え始めた。


──お父さん、お母さん。私ね、お父さんとお母さんのこととっても大好きなんだよ。


始めにゆりあが放ったのは、両親に対する愛情だった。


僕が伝えたこの言葉に、おじさんとおばさんは顔をくしゃりと歪める。


閉めきったカーテンの奥、少しだけ開いていた窓から風がさらりと入り込み、このじめじめとした部屋に新たな空気を送り込む。


──だからね、ふたりがそうして悲しそうな顔をして、泣いているところなんて見たくない。私が亡くなったのはきっと、仕方がないことだったんだよ。


ゆりあの口からこぼれる言葉たちが本心なのか、または自分に対する言い聞かせなのか、それらのどちらでもないのかは、分からないけれど。


必死に両親を見つめて思いを伝えるゆりあを見ていると、僕がこうして悲しんでいてはいけないと強く思う。


僕はゆりあを守りたい。


ゆりあが前を向いて笑っているのなら、僕もその笑顔の隣で笑っていたい。