顔をあげ僕を目に映したおばさんはやわらかく微笑んで、それからそっと目を伏せた。


「ゆりあは今頃、何をしているのかしら」


泣きそう、というか、もうおばさんは泣いていた。


「あの子、昔から変なとこばかり強がって自分の気持ち全部押さえてつけて……そんな子だったから、きっと今も苦しくてないているんじゃないのかって、そう思ったら親の私が情けなくってねえ」


泣きながら微笑むおばさんの目尻に深いしわが刻まれる。


木漏れ日に照らされたその顔は、僕が知っているおばさんの顔より幾分も覇気がなく疲れているようだった。


おばさんは続けて言う。


「あの子の命と私の命を取りかえることができたならいいのにと、毎日のように思っているの」

「透子」

「だってあなた、そうじゃない。あの子にはこれから幸せな未来が待っていた。違う?」


おじさんが遮るのをよそに、おばさんは捲し立てるように口を滑らせる。


僕の後ろに立っているきみの耳を塞いでしまいたかった。


「お友達ともっと遊びたかったでしょう。もっと好きなことをしたかったでしょう。きっと恋愛だって……。優太くんともっと一緒にいたかったでしょうに。結婚や出産、女の子としての喜びをあの子になにも経験させてあげられなかった」


そう言って涙を流すおばさんをとうとう見ていられなくなった僕は、視線を床へ落とす。