ゆりあがどう思うか分からないけれど、僕だったらつらいと思うから。
だけどこのまま返事をしないでいるのは不自然だと思った僕は、仕方がなく頷こうとした。
……けれど、ふいに誰かにシャツを引っ張られたような感覚がして後ろにちらっと目をやると、ゆりあが僕のシャツをつまんで悲しそうに微笑んでいた。
「……優太。お願いがあるの」
きみはそう言うと、僕の目を真っ直ぐに見上げた。
その目はとても強い覚悟を宿していて、僕はそれから目をそらせない。
だからきみにそっと目配せをして、分かった、と目で返事をした。
「ありがとう、優太」
ゆりあはにこっと微笑んで、それからお父さんをじいっと見つめると、そのまま話し始めた。
「お父さんに伝えて。伝えたいことがあってここへきました、って。私が優太の世界に存在していることは言わないでね」
ゆりあの顔をいくら眺めてみても、何を考えているのかは読めなかった。
けれど、それが愛しいきみの願いならと僕はゆりあの言った通り従うことに決めて、そのままおじさんに伝える。
あくまでも、僕が話しているように。
「実は、おじさんとおばさんへ伝えたいことがあってここへきました」
おじさんは驚いたように目を見開くと、そっと微笑んで。
「それは、ゆりあのことかい?」
そう、静かに放った。
僕はそれに深く頷くと、今にも消えてしまいそうなほど虚ろな目をしているおばさんに目を向ける。
それに気付いたおじさんが、おばさんに声をかけた。
「透子。ゆりあとお付きあいしていた優太くんがきてくれたよ。僕たちに話があるらしいんだ。きちんと聞いてあげようじゃないか」
閉めきられたカーテンの端から入り込む木漏れ日が、おばさんの顔を照らす。