こうして次の行き先が決まった僕たちは立ち上がり、ひろっぱの入口に止めてある自転車を目指して歩き始める。
「たこ焼きを買って食べてからゆりあの家に行こうか。そうしたら時間を無駄にしなくていいでしょ?」
提案を投げかけたらゆりあが笑って頷いてくれたから、そうすることに決めてゆりあを自転車の後ろへ乗せた。
「出発進行だね、それ優太、行け~!」
少しいたずらっぽく声を張り上げたきみに背中を押されるように自転車をこぎ始めた僕の顔に、日光が降り注ぐ。
──きみと再会を果たしてから、14時間が過ぎた。
それはとても早く感じるけれど、きっと今までにないほど充実した時間で。
きみがいなくなり、再びこうして僕の前に姿を現すまで僕は気が付かなかった。
いつも幸せに感じていた一瞬を、もっと幸せに感じることができるということを。
人は一分一秒を、こんなにも大切に一生懸命に生きることができるということを。
僕の前に再び現れたきみと過ごした14時間の間に、それを教えてもらった気がするんだ。
……ねぇ、きみは僕ともう一度会うことを選んでよかったと思ってる?
なんて、どこまでも臆病な僕は聞けやしないから、楽しそうに笑うきみの声を耳に刻みながら僕もきみに気付かれないように一緒に笑った。