そして徐々にその手が下へ降りていき、僕の指ときみの指が交互に絡まる。


この繋ぎかたを世間一般でなんというか、僕は知っている。


恋人繋ぎというやつだ。


草々の上で寝転びながら手を絡めあう僕たちは、空を優雅に泳ぐ鳥たちからどう見えているのだろうか。


ドキドキを誤魔化すように息を吸い込めば、自然の香りが鼻をくすぐった。


どこか心地のよいこの香りにずっと酔っていたいような、そんな感覚ですら浮かび上がる。


隣にいるゆりあを見ればただ無心になって空を眺めているように見えたけれど、その心中は穏やかではないようだ。


だって隠せていないから。


真っ赤に染まる頬も、緊張で少し早くなった呼吸音も、全てがきみが恥ずかしがっているということを物語っている。


それでもなんでもないように平常心で空を見るゆりあがどうしようもなく可愛く見えて仕方なくなった僕は、ゆりあの手を壊さないように優しく握り返し、ありきたりな話題を投げかけた。


「ゆりあ、お腹空いたんじゃない?」


それでもゆりあは空ばかり見て僕の方を全く見てくれないから、僕はゆりあから何かを話してくれるまで待つことにした。


そうして待つこと数分、ゆりあが小さな声を発する。


「優太、お腹空いた」


……ほら、こうして照れて何も言えないときのきみは僕が何かをしつこく話すよりも、ただゆりあに寄り添うようにしていればいい。


少し、本当に少し待っていれば、ゆりあは僕をきちんと目に映して見てくれるから。


「ゆりあは何が食べたい?」

「……たこ焼きがいいな」

「ん、りょうかい。たこ焼きね。確かここにくる途中でたこ焼きしてたよね?」


自転車でここへくる途中で見かけたたこ焼き屋さんを脳中に思い浮かべながらゆりあに尋ねると、ゆりあはこくんと頷く。