下手なことをたくさん言うよりも、“楽しかった”の一言を伝えるほうが僕たちには合っている、そんな気がしたから。
さあさあと風が草を揺さぶる音だけが数秒鼓膜に流れた。
肌に触れる草々はもう冷たさをなくし、代わりに太陽の熱であたたかく熱せられている。
「暑いね」
目を開けたきみは、太陽の眩しさに目を細めながらちらりと僕を見た。
僕も腕を額の上にやり、太陽を遮るようにしてゆりあと目をあわす。
「ふふっ」
「ははっ」
どちらともなく笑いだした僕たちは、ふたり同時に目尻をきゅうっと下げた。
ゆりあが笑いながら言う。
「優太といると、落ち着くなあ」
「それは本音?それとも僕をからかうための嘘?」
そう返事を返すとゆりあは眉をぐっと眉間に寄せて、それから僕を睨み付けた。
「ああ、そんなこと言うんだ。せっかく私が素直になって言ってあげてるのに。優太ってば、分かってないなあ」
僕を冷ややかな目で見るゆりあの瞳の奥に光が反射してゆりあの目がぴかりと光っているように見える。
怖いなあ、僕の彼女は。
そう呑気に思っていると不意にあくびが出てしまって、それを見たきみは鋭い目をやわらげてどこか申し訳なさそうに笑った。
「優太ごめんね?眠たいんでしょ?」
「ううん、大丈夫。ゆりあといると眠気なんて忘れてしまうくらい楽しいから」
「でも、優太眠たそうだよ」
「僕はいいの。眠るよりも大好きなきみとふたりでこうして過ごす一瞬のほうが僕にとってはとても大切だから」
それでも不安そうに眉を下げるきみ。