口先に力を入れて息を吹き込むだけでこんなにもきれいにできるシャボン玉を見ていると、人生はこんなに簡単ではないのになあと考えてしまって、僕は思わず苦笑いを浮かべた。
けれど、本当にそうだ。
人生は、こどもの頃僕が思っていたように簡単ではなかった。
幼い頃シャボン玉をしたときは、ただ純粋に屋根まで上がれと、どこまでも上がれとそう思っていただけだったけれど、今は違う。
大小様々なかたちをしたシャボン玉を見て、人にも様々な性格や意見を持っている人たちがいると思うようになった。
青空が透いてしまうほど透明なシャボン玉を見て、人はこんなにも透明できれいなものではないと思うようになった。
これは僕が大人になったということなのだろうか。
だけど、不思議だ。
きみが隣にいるだけで、この世界がこんなにもきれいに見えてしまう。
大人になるにつれて目に見えてきた世界の汚い部分も、人間の卑怯な部分も、ゆりあがそばにいてくれるだけであっという間に浄化されて輝くんだよ。
「優太、楽しいね」
僕の隣にきみがいる。
それだけできっと、僕は誰よりもきれいな世界を見ることができる。
それは僕だけにしか分からない特別な世界、景色。