ゆりあの黒髪がその風にあわせてさらりと舞う。
「せいの、で同時に吹こうよ」
ゆりあは僕を見て微笑むと、吹くものを液体につけ先っぽを口に加えた。
あわててゆりあの真似をするように僕も液体をつけ、それを下唇の上に乗せると、唇を尖らせるように加える。
「「せいの」」
ふたりのかけ声がきれいに重なり、頭上に広がる青空へと吸い込まれていく。
そして声が完全に消えたその瞬間、僕たちの周りにたくさんのシャボン玉が浮かび上がった。
それは青空を透かしてしまうほど透明で、けれど僅かに虹色に色づいて。
「わあ、きれいだね」
大小様々なかたちをしたシャボン玉を見て、ゆりあが手を伸ばしながら大きな口を開け笑う。
無邪気なその笑顔は、僕の心までもを爽快に晴らしてしまうような笑顔で。
気付けば僕もこどものように笑っていた。
「ふふ、優太も笑ってる。こどもみたいだね」
「うるさい。ゆりあだって、こどもみたいだよ」
ゆりあにそう言葉を放り投げると、ゆりあはもう一度ふうっと吹きながら目だけを細める。
「こんなことしてる私たちは、ふたりともこどもってことだね」
ゆりあの言葉に、嘘はない。
僕は頷くしかできずに仕方なく頷くと、再び緑の棒に液をつけ吹いた。