おじさんはにやにやと僕を見る。


「いいねぇ、青春ってやつか。おじさんはもうとっくにそんな青春終わってしまったよ。というか、青春なんぞしてなかったけどな、はっはっは」


商店街に響くほど大きな声で笑い始めたおじさんに驚きながらも僕も笑うと、おじさんはキリリとした一重の目を優しく細めた。


「でもお兄ちゃん。彼女のこと、大切にしてあげるんだよ。その子のことを守れるのはお兄ちゃんだけなんだからな」


──本当に優しい笑顔だった。


「はい。彼女のこと大好きなので、僕がこれからもずっと彼女のことを守っていけたらいいなって思ってます」


ゆりあが隣にいると分かっていた。


僕のことをどんな顔で、どんな目で、どんな表情で見ているのかも、すべて知っていた。


ゆりあのことをこれからもずっと守っていけたらいいと僕はおじさんに言ったけれど、現実的にはもう無理だ。


考えたくない、だけどそれが本当で。


けれどね、ゆりあ。


僕は本当に思ってるんだよ。


きみが今日消えてしまってもなお、僕はきみを守りたい。


これからも僕の心にいるのはきみで、きみの心にいるのは僕で、いつまでもそうあってほしいと心から願っている。


偽善とかヒーロー気取りではなく、きみがいなくなってからもきみという存在を消えることのないように守っていきたいんだ。


そんなことをいったら、きみはばかだなあと笑うだろうか。


ねぇ、ゆりあ。


そっと風の流れに合わせるように振り向けば、どこか泣きそうな顔をしながらもきれいに微笑むきみが、確かに地に足をつけて立っていた。