たくさんの人が商店街のアスファルトを蹴る音、話す声、お客さんを呼び込む決まり文句。


いろんな音が混ざって耳に入る中で、僕はきみの声だけを聞こうと耳を澄ます。


「そうなんだよね、お父さんはもちろん仕事なんだけど。お母さんは買い物の買い出しに遠くのスーパーに行ってると思う」

「うん、ゆりあが前言っていたの、思い出したんだ。ゆりあのお母さん、毎日この時間に遠くのスーパーまで行くんでしょ?」

「そうなの。本当に意味分からないよね」


クスクス笑って目を細めるゆりあの顔が、とても眩しそう。


一緒になって笑っていると、すれ違ったひとりの高校生になにか変なものを見る目で見られたのに気付き、あわてて口を覆った。


「あ、優太ごめんね?歩きながら話そうか?そしたら少しは変に思われないよね?」


そのせりふに僕は頷き、ゆりあと再び歩幅を合わせて歩き始める。


「ゆりあのお母さん、何時に帰ってくるの?」

「2時くらいだと思う」

「2時かあ。あと2時間と少しあるね。ゆりあは他になにかしたいことないの?ほら、花火は夜にするとして、他になにかさ」

「他にしたいことね、たくさんありすぎて決まらないや。でも、そうだなあ。強いて言うなら、シャボン玉かな」


僕の顔ではなく前を見ながら話すゆりあの横顔を目を映すと、ゆりあは無邪気な子どものような笑顔を浮かべてとても楽しそうにしていた。


なぜ、シャボン玉がしたいのだろう。


こう、ほらさ。


もっと高校生ともなってみれば、他にしたいことがあるのではないのか。