そのとき、ふと思った。
このまま僕も消えてしまえたなら、どれだけ楽になれるのだろうか。
暗闇の中に吸い込まれた声と同じように、僕の存在も、僕という人間も、この暗闇の中に同じように吸い込まれたなら。
……もうこれ以上、ゆりあに会いたいと思い、苦しみながら泣くこともなくなるのだろうか。
この張り裂けるような胸の痛み。
ゆりあを亡くした寂しさや孤独。
その全てから、僕はさよならをしたい。
僕はきっと、ゆりあがいなければだめなんだ。
自分がこんなにもゆりあに支えられていたことにはじめて気づく。
「はぁ……」
息を吐いてから目を閉じると、ちょうどこの街の伝統である0時を告げる鐘がゴーンゴーンと鳴り響く。
……僕の18歳の誕生日まで、あと24時間。
きみと過ごした17歳が終わるまで、あと24時間。
気付けば僕の両足は膝まで海水につかっていて、真っ黒な海がもうすぐそばまで狭まってきていた。
空を見上げると、漆黒の景色の中にぼんやりと三日月が浮かび上がっていて、それがよけいに僕を苦しめた。
だってこの空に浮かぶ三日月は、僕たちが初めて泊まりで旅行に出掛けたときに見た三日月にそっくりだったから。
「ゆりあ、会いたい……」
ぼそっと呟いた僕の頬に、温かな雫が一筋伝った。
そしてその雫が海水にわっかを作る。
──ポタン。
その瞬間、目の前がピカッと光った。