少しだけホイップクリームとフルーツの崩れたそれは、不器用なきみをそのまま現しているようで、きみに気付かれないようにこっそりと笑った。


「いただきます」


手をあわせてフォークを握り、パンケーキに一刺しするとそれを口元へ持っていく。


パクりと一口だけ口の中に含むと、なんともいえない甘ったるい味が口いっぱいに広がって思わず僕は顔をしかめる。


「優太には甘すぎるかな？」


心配そうな顔をするゆりあに目で大丈夫と合図をすると、口を休めることなく動かし続けた。


しばらく噛んでいると、フルーツの酸味がクリームの甘さとほどよく合わさって僕の味覚をじくじくと揺さぶる。


美味しいかもしれない。


実は甘いものがあまり好きではない、というか苦手な僕だけど、このパンケーキなら美味しく食べられるかもしれないと思った僕は、顔をあげてゆりあと目を合わせた。


「これ美味しいね」


その言葉にゆりあは僕よりも、恐らくパンケーキを作った店員さんよりも嬉しそうに笑う。


なぜゆりあがそんなにも嬉しそうなのだろう。


不思議に思っていたのが伝わったのか、ゆりあは右手で口を覆ってあははと笑った。


「優太が美味しいって言ってくれた。優太、甘いもの苦手だったでしょ？」


パンケーキを指差しながら目を優しく細めたゆりあ。


僕が甘いもの苦手なことを知らなかったと思っていたから、僕は今きっととてもあっけにとられた顔をしていると思う。