個室へ案内された僕たちの目の前には、大きなお皿にきれいに盛られたパンケーキ。
いちごやパイナップル、マンゴーやぶどうが大量のホイップクリームの上にのせられていて、見ているだけで甘ったるくてお腹が膨れそう。
「優太、美味しそう」
ゆりあはフォークを左手に、ナイフを右手にして、とても嬉しそうに色とりどりのパンケーキを眺めていて、それを見ている僕も幸せになれる。
「たくさん食べなよ」
「え、優太は?食べないの?」
「僕はゆりあが食べているのを見ているよ」
「……でも」
「ゆりあが美味しそうに食べていたら、僕はそれで幸せなんだ」
僕の言葉にゆりあは腑に落ちない表情を見せたけど、こうなったら僕が折れないことをゆりあはきっと知っている。
だから、ほら。
ゆりあは申し訳なさそうにしながらもにこりと笑って、僕に言うんだ。
「優太、ありがとう」
……うん、僕はやっぱりこの笑顔を見ていられるだけで世界一の幸せ者だ。
ありきたりな表現だけど、本気でそう思うんだよ。
「いただきます。ああ、可愛いなあ」
ゆりあは美味しそうにパンケーキをナイフで切ってはひとかけらずつ口の中に頬張っている。
やっぱり個室にしてもらって正解だったかもしれない。
こんな風にナイフやフォークが宙に浮いてカタカタ動いていたら誰でも腰を抜かしてしまうほど怖いと思うから。