──カランカラン。
ベルのような音がしたのと同時に、中から二つ結びをした可愛らしい店員さんが僕らのもとへきた。
「お客様、お一人ですか?」
その言葉に、この店員さんからもゆりあは見えないんだと分かりきったことを思い頷くけれど、この恥ずかしさはどうしたものか。
僕のような高校生の男が、こんなにも可愛い店に一人でくるなんて、どんな拷問だろう。
「では、ご案内いたしますね」
営業スマイルを浮かべた店員さんに愛想笑いを浮かべながらも真っ赤な顔を隠しきれない僕は、顔を真下に俯けて店員さんの後ろを歩く。
「あははっ」
そうしたら後ろから聞こえてきた笑い声に、無性に膨大な恥ずかしさが込み上げてきた。
「優太、可愛い」
「…………」
「一人でこんなにも可愛らしい店きちゃったね」
「…………」
さきほどとは打って変わって、立場が完全に逆転した僕たち。
ゆりあはあれほど話さなかったのに、今は鬱憤をはらすかのように話しまくっている。
「ね、優太。可愛いね?一人でパンケーキ食べちゃうの?」
声だけできみが笑っているって分かるから、僕はやるせない気持ちになる。
とうとう僕は席にたどり着く前にゆりあのいる後ろがわを振り向いた。
「ゆりあ、黙って」
僕がたまらず言うと、ゆりあではなく僕の前を歩く店員さんが勢いよく僕を見たのが分かってしまって、ついには頭を抱えてしまいたい気持ちだ。