それから僕たちはお互いのソフトクリームを交換して食べあったり、喉が乾いたからとふたりでひとつのオレンジジュースを飲んだりと、ひまわりを目に映しながら楽しい時間を過ごした。
そうしているうちに時刻は9時を告げ、ここへきたときから3時間もの時間が過ぎていた。
「あと、15時間だね」
ベンチから放り出された両足をぶらぶらさせながら空を見上げポツリと放ったきみに、僕は笑う。
「あと15時間じゃないよ。まだ、15時間も一緒にいられるんだよ」
僕は自然と、そう思うようになっていた。
だって、あと15時間と言うよりも、まだ15時間と言ったほうがより長い時間をきみと過ごせるような気がするでしょ?
僕たちは本当は、もう会えない運命だった。
それでもこうして同じ時間を過ごすことができている。
その奇跡の一瞬を悲しく思うのではなく、プラスに思うほうが僕もきみもきっと幸せなのではないか。
「……そうだね。優太とまだ15時間も一緒にいられる」
僕の見解がちゃんとゆりあに伝わるか心配だったけれど、ゆりあの笑顔を見ているときちんと伝わったみたいだ。
さらさらと流れる風に、そよそよと揺れるひまわり。
それらを背景にして、きみは目を細めて首を傾げた。
「次はどこへ行こうかなあ」
「パンケーキ屋さんは?商店街にできた」
「あ、私が行きたいって言ったの覚えててくれてたんだ。そうだなあ、パンケーキ食べたいな」
「じゃあ決まりだね」
そうして僕たちはふたり立ち上がると、お互いに同じ歩幅でどちらからともなく歩き始める。
牧場を出るときおじさんにお礼を言うと、おじさんはまたきてねと汗を拭って僕らに手を振ってくれた。