ゆりあのシャンプーのやわらかい匂いが僕の鼻をくすぐり、僕の体を巡って心を安らげる。
ゆりあは不思議だ。
いつだって僕をこんなにも簡単に幸せな気持ちにしてしまうんだから。
「……私も、優太とここにこられてよかった」
少し体を離してゆりあの顔を見下げると、ゆりあは目を伏せながら口元だけ緩める。
長いまつげが微かに震えた。
「ひまわりって、素敵だね」
きみは視線を風に揺れるひまわりに目をやった。
「こんなにもひまわりがきれいなのはきっと、あのおじさんの奥さんの愛が太陽の光となってこもってるからなんだろうね」
「……そうだね」
「亡くなっても、誰かに愛を与えられる、輝ける、それってすごく素敵なことだよね。“誰かの大切”になれるって、それだけで本当にすごいことなんだなあって、思ったよ」
ゆりあは風に散らされてしまいそうなほどに儚い笑顔で、太陽を仰ぐひまわりを見つめる。
その顔を見ていると、ゆりあの思いがひしひしと空気を伝って伝わるようで、僕の胸がグッと捕まれたような錯覚に陥る。
「ねぇ、優太。私とここにきてくれてありがとう。優太とまたこの景色が見えて、泣きたいくらい幸せなんだよ」
そう言いながらも僕の瞳に映るきみは、涙を流す気配もなくにこにこと笑っていて。
今ここにある光景に、きみがいてくれることに心から感謝して、そしてきみの愛しい花のような笑顔をずっと見ていられるように僕がきみの笑顔を守ろうと、そう思った。