おじさんが僕を見つけたときから、お兄ちゃんとしか言っていないということに気が付いたから。


おじさんからは僕の隣にいるゆりあのことが見えていない。


本当にゆりあは僕にしか見えない存在なんだとそう痛感させられて、分かってはいたけれど胸がズキズキと痛んだ。


「優太」


そのときシャツに違和感を感じて振り向くと、僕の名前を呼びながら満面の笑みを浮かべるゆりあがいて。


「ひまわり畑、見たいなあ」


そう僕の目をきらきらとした瞳で見つめる。


僕はそっと微笑むと、ゆりあからおじさんに目を移して笑顔を作った。


「ひまわり畑を見に来ました」


おじさんは僕の言葉ににこりと笑うと、視線の先に広がるひまわり畑に目をやって口を開いた。


「このひまわり畑、亡くなった奥さんが好きだったんだ。それを今でもこうして見に来てくれる人がいて、本当に嬉しいよ。ひまわり畑は、僕と奥さんの宝物だからね」


そうしておじさんは晴れ晴れとした朝空を見上げる。


──ひまわりは太陽がないと咲かない花、だから僕は、この太陽を奥さんだと思っている。きっと彼女はずっと、僕らの大切なひまわり畑を輝かそうとしているんだ。そう、思っていないと自分が壊れてしまいそうだったから、あくまで僕の想像なんだけれどね。


この言葉とおじさんの儚い横顔に込み上げるものがあったけれど、ここで僕がなにかを語るのは違う、そう思って僕はまぶたを伏せた。


「……ひまわり畑、散歩させてもらってもいいですか?」

「ああ、いくらでもいてくれていい。気の済むまでこのひまわり畑を見ていってくれ」

「ありがとうございます」


僕がお礼を言ったのに合わせて、隣にいたきみもぺこりと頭を下げていた。