そんなゆりあを見ていると今すぐにでもこのひまわり畑の中を自由に歩かせてあげたい気持ちになるけど、ここの持ち主の許可なしにそんなことをする権利は僕には当然ない。


残念だけど、またもう少し経ってからここへきた方がいいんではないのかと思う。


そう結論を出して、ゆりあにそのことを告げようと思った矢先のことだった。


「……お兄ちゃん、ここの観光にきたのかい?」


突然聞こえてきた声にハッとして視線を後ろへ移すと、そこには1年前にもいたここの牧場を経営するおじさんがなにやら大きな袋をかかえて立っていた。


僕はとりあえずぺこりとお辞儀をする。


そうするとおじさんは目尻に深いしわを作って、重そうな袋を地面にどさりと落とした。


「随分と早起きだねぇ。ここの牧場は8時から開園なんだよ」


おじさんは僕を見てにこりと笑う。


「……でも、今日は特別に入れてやろうかね。せっかくお兄ちゃんがこんなに朝早くからきてくれたんだ。帰すわけにはいかないよ」

「ありがとうございます」

「お兄ちゃん、お前さんはここに何をしにきたんだ?乳絞りか餌やりか、それともひまわり畑を見にきたのかい?」


その問いに、僕は一瞬口をつぐんだ。