その事実が、とてもとても悲しかった。
「……優太」
「……なに、ゆりあ」
「私ね、この世界に昇る朝日をずっと見たかったんだよ。大切な優太と一緒に」
ゆりあは笑って僕を見る。
……この景色をきみと見ていられるのは、今だけだ。
だからこそ僕も、この光景を忘れることのないように胸にしっかり刻んでおこう。
真っ青な海に映し出される朝日に、ぼんやりと染まる茜色の空。
僕の隣にいる、大好きなきみ。
この景色をきみがいなくなってからひとりで見たときに泣きたくなるのではなく、きみとふたりでいることができて幸せだったなあとそう思えるほどに。
今のこの景色を、僕は胸に刻みつけるんだ。
そっとゆりあの手を握ると、その手はとても小さくて。
付き合っている頃何度も触れた温もりだったけれど、僕の心が少しずつ少しずつ楽になっていくのを肌で感じた。
「……もう少ししたら、出掛けようか。ゆりあの行きたいと言ったところ、僕は全部付き合うから」
ゆりあの心に不安があるのかは分からない。
でももしゆりあが不安でいっぱいなのなら、僕と一緒にいることでその不安が少しでも和らげばいいと思う。
そう思いながらゆりあを見つめると、ゆりあは一瞬泣きそうな顔をしたけれどすぐにいつものように笑って。
「優太、ありがとう」
と最高の笑顔を見せてくれた。