そして時計を見て口元をにんまりと緩めたあと、僕を見ていたずらな笑顔ではにかんだ。
「せーかい」
その笑顔に僕の心臓が叩かれたように脈打つ。
このいたずらな笑顔に僕は幾度となく救われてきた。
ゆりあはちょんちょんと僕の頬をつつくと、
「優太すごいね」
と今度は僕の頭をくしゃくしゃにしてきたから、僕はゆりあの手を掴み、反対にゆりあの頭をなでてやった。
「ゆりあだって。先に5時過ぎって言ったのはゆりあでしょ?」
「そうだけど。でも優太、すごい」
「ゆりあの方こそ、すごいよ」
僕がそう言って目を細めると、ゆりあも同じように目を細めて僕の肩をポンと叩いてきた。
「私たち、なんの褒めあいしてるんだろうね」
「本当だね。僕たち以外の人が聞いても、なんのことかさっぱり分からないだろうなあ」
同時に笑いだす僕とゆりあ。
ゆりあの笑顔は、向こう側にギラギラと昇る朝日に負けないくらい眩しく見えて、僕は思わず目を伏せる。
泣かないとついさっき決めたはずなのに、時間の流れを意識してしまいもう泣きそうになっている僕がいた。
……ゆりあと朝日を見るのは、初めてだ。
だけれども、ゆりあと朝日を見ることができるのは、この一日だけ。
今、この一瞬しかきみとこの光景を見ることができない。