ふたりでしばらく抱き合っていたあと、僕たちは恥ずかしさからどちらからともなく笑いあう。


「そろそろ誰かきちゃうよね。明るくなってきたし、朝の散歩の人とかも」


ゆりあはそう言って目を細めると、小さな声をもらしながら僕から体を退けた。


そして僕の隣に身を寄せると、僕の顔を見ながらゆりあが首を傾げる。


「今、何時なのかなあ」

「時計見てみたらいいよ」


その答えに、ゆりあがまたムッと唇を尖らせた。


え、僕なにかいけないこと言ったかな。


ゆりあが時計をつけているから、時計を見たらいいと言ったんだけど。

なにかだめだったのだろうか。


ゆりあが言いたいことが本当に分からなかった僕はゆりあを見て首を傾げると、ゆりあは不機嫌そうな顔をして僕にまた言った。


「優太のばーか」


今日何回も聞いたそのせりふ。


僕は苦笑いを浮かべながら、ゆりあに尋ねる。


「本当に分からないんだよ。どうしてそんなにムスッとしてるの?」

「……分からない?」

「うん」

「本当に分からないの?」

「本当の本当に分からないよ」


そうするとゆりあはようやく僕が本当に分からないことに気付いたのか、唇を尖らせたまま僕に教えてくれた。