嬉しいはずなのに、きみがいないという現実は変わらない、それがなぜか切なかった。


「優太」


ふと、きみに名前を呼ばれる。


返事をする前にきみは僕の膝の上にまたがって、僕の首に腕をまわした。


きみが甘えたいときにする格好。


大好きなゆりあの顔が目の前にあって、久しぶりの感覚に僕の体が緊張して変に強ばる。


「……そんな顔しないでよ」

「僕、どんな顔してる?」

「すごく悲しそうな顔。泣きそうな顔してる」


そう言うゆりあの顔も、泣きそうだった。


「私が、いなくなるから?だから優太は、こんなにも悲しそうな顔をしてるの?」


ゆりあの顔を見つめたまま、僕は頷く。


ここで嘘をつきたくなかったから。


「優太はやっぱり優しい」

「僕は優しくなんてないよ」

「だってこんな私のために悲しんでくれるんでしょ?」

「それは、ゆりあのことが好きだから」


きちんとゆりあの目を見つめて、本当にそう思っているんだよと伝わるように言った。