──そうしていてから、どのくらいの時間が流れたのだろうか。
ゆりあが静かな声で呟いた。
「優太、怒らないんだね」
言葉の意図が全く読めなかった僕は、次にゆりあから出てくる言葉を待つことにした。
それから数秒後。
「私がこんなにわがままを言っても、優太は全然怒らない。優太はきっと眠たいんでしょう?それなのに、私が寝たくないと言ったら私にちゃんと合わせてくれる」
「そんなの」
当たり前じゃないか。
それに、僕は眠たくなんてないんだよ。
ただ、ゆりあが眠たいんじゃないかと思って、ゆりあのことを心配していただけで、それは全てゆりあの勘違いだ。
そう言おうとしたけれど、ゆりあは僕の言葉を遮るように言葉をピシャリと被せた。
「そんな優太が私は好き。この世界にいる誰よりもきっと大好きなの」
なぜだか胸が針でつつかれたように痛かった。
それは多分、きみのその言葉に嘘はなくて、本気で言ってくれているのだと分かったから。
「私、本当は眠たいの。だけどね、それ以上に、優太とこうしてふたりでいられる時間を大切にしたい」
ゆりあは僕の肩から頭を上げて、つなぐ手に力を込めたまままっすぐ僕を見つめた。