けれどゆりあは僕をチラッと見ると、嬉しそうに微笑んでくれた。
その笑顔がやけに眩しくて、海や星、周りの景色さえもが霞んで見える。
「ねぇ、優太」
きみは悲しみをまぎらわすように明るい声で僕の名前を呼びながら、コツンと僕の肩を頭をのせる。
寄せては返す波を目に映しながらゆりあの言葉をただじっと待っていると、ゆりあはスゥーっと息を吐いた。
「私、優太とやりたいこともたくさんあるよ」
僕は“うん”と頷くだけ。
「せっかくの夏だから花火もしたいし、私が亡くなる5日前にできた商店街のパンケーキも食べたい」
「……他には?」
「たくさんあるけど、一番はそれかな。それだったら優太とも行けるよね?できるよね?……あ、でも、優太以外の人からは私は見えないから、優太がひとりで会話してるように見えちゃうね」
そう言ってゆりあが声のトーンを落としたから、僕はそんなゆりあを諭すように続ける。
「大丈夫だよ。僕はゆりあと一緒にいられるだけで、話せるだけで嬉しいから。周りの目なんて気にしなくていいんだよ。僕だってゆりあといろんなところへ行きたいんだから」
そっと微笑むと、ゆりあの照れたような笑い声が聞こえた。