それからしばらく無言の時間が続いて、だけどその時間を途切れさそうとは思わなくて、そのままゆりあが話してくれるのを待っていると、ゆりあはようやく口を開き始めた。


「私、行きたいところたくさんあるの」

「例えば?」

「……優太と初めてデートしたひまわり畑とか」

「ああ、行ったね」

「……家にも、帰りたい。私の家」

「ゆりあのお父さんやお母さんもびっくりするだろうね」


僕がそう言えば、ゆりあはなぜか表情を暗く曇らせた。


真っ暗な中でも、ひしひしと伝わってくる。


「……ゆりあ?どうしたの?」


ゆりあは僕の質問に、小さな声で呟く。


「……お父さんやお母さんには、私の姿は見えないの」

「え?どうして?」

「私は優太に会いにこの世界に戻ってきたから。優太以外の人からは、見えないようになってるんだって」


……そうなんだね。


寂しそうに口を開くゆりあに僕はなんて声をかければいいのだろう。


きっといくら悩んだって、この答えはでない。


なんとなく自分でもそのことが分かった僕はその話題について多くを聞くことをせず、わざと明るい声でゆりあに話し始めた。