途端に目頭がまた熱くなる。


終わってしまう、きみのいた世界が。


きみと過ごした17歳の世界。


僕の愛するきみがいたこの世界が終わるまで、あと一分。


僕はこの一分のなかで、きみに何を残せるのだろうか。


きみに何を伝えられるのだろうか。


伝えたいことがありすぎて言葉がでてこないんだ。


そんな僕の気持ちがゆりあにも伝わったのだろう。


ゆりあは僕を見上げて優しく笑うと、僕の頬に指を添えてそっと触れた。


「……そういえば、優太は何をお願いしようとしてたの?線香花火の勝負、もし優太が勝ったなら」


星の色を映しながら問いかけられたその言葉に、僕はまぶたを伏せて口元を緩める。


仕方がないから、ゆりあだけには特別に教えてあげよう。


僕の願いはね───


「きみの願いが、叶いますように」


優しくゆりあを見つめて、たった一言だけ。


きっとこれで、十分伝わるはずだから。


だから、ほら、ゆりあの顔がくしゃりと一瞬だけ歪んだ。


大粒の涙が、そのきれいな頬を伝う。


また泣かせてしまったなあ、そうどこかぼんやりと考えてしまうけれど、そのゆりあの涙はきっと悲しい涙じゃないことは確かだから。


僕は安心して、瞳にきみを映す。


瞳のなかのきみは、美しい笑みを浮かべて誰よりも素敵に笑っていた。


「……優太の願い、叶えてね。絶対、約束だよ。優太の願いが、私の願いだから」


……そうだね、ゆりあ。


ゆりあの願いが叶えば、僕の願いも叶う。