きつくきつく、きみの温もりが消えないように。
これからもきみの存在を、僕のなかで憶えておけるように。
僕が愛したきみを、忘れてしまわないように。
「ありがとう、優太」
耳元で聞こえる微かに震えたきみの声が、僕の涙を誘う。
「優太のこと、好きになってよかった。優太とたくさんの思い出を作ることができてよかった。優太に出会えて、本当によかった」
「僕だって、同じ気持ちだよ」
「優太と見た景色、優太と生きた世界、どれも私の宝物」
「……そんなこと。僕も、ゆりあといた日々の一瞬一瞬が何にも変えられない大切な記憶の宝物だよ」
僕がそう言えば、ゆりあはにこりと微笑んで僕の肩に手を伸ばす。
「ねぇ、優太。愛してるよ。優太のこと、世界で一番愛してる」
精一杯背伸びをしたきみが、僕のことを強く抱きしめる。
いつもは素直じゃない恥ずかしがりなきみが、こんなにも僕に好きを伝えてくれる。
最後の別れがこれじゃあ、男として、ゆりあの恋人として情けないじゃないか。
僕はゆりあの腰に腕を回しそっと息を吐くと、きみにありったけの愛を囁く。
いつもの僕じゃ、前までの僕じゃ、絶対できなかったこと。
「ゆりあ。僕も愛してるよ。いじっぱりなきみも、わがままなきみも、素直じゃないきみも。恥ずかしがりで甘えたがりなきみも。どんなきみも、愛してる」
強く温もりを感じようと目を閉じた僕の頬に、温かな滴が伝い落ちる。
──ああ、ようやく分かったよ。
前までは言えなかった言葉たちが、きみに再会を果たしてからこんなにも言えるようになった理由が。
僕は今まで、知らなかった。
幸せな時間にいつか終わりがくることも、毎日は毎日永遠に続くんじゃないということも。