けれど、僕はきみのことを受けとめる。
きみのことが好きだから。大好きだから。
「これが、私の最後のわがままだよ」
きみの瞳に、僕の顔が映る。
瞳の中心に、僕がいる。
「優太は生きて、ずっと生きて。私の見られなかったものをたくさん見て、私の感じられなかったものをたくさん感じて。そして、恋をして。大切な人と、幸せになって」
ゆりあの声は震えていた。
ゆりあは泣きながら、懸命に笑っていた。
「ずっと考えてたの。今まで私をたくさん愛してくれた優太に、私が最後にできることはなんだろうって。優太のこれからの幸せのためにできることはないのかなって。……ねえ、私ね、優太のことすごく大好きなんだよ。大好きだから、他の人になんて渡したくない」
涙をこらえるように僕は空を仰ぐ。
視界に、世界が映る。
それはとてもきれいで、淡くて、儚いもの。
「でもね、優太のこれからを縛りたくもない。優太には、優太らしく生きてほしい。優しい優太は、これからもっと素敵な人になれると思うから」
この世界は理不尽なことで溢れている。
けれど、それと同じくらい、いや、それ以上に、限りない愛と奇跡で溢れている。
自分をなくして死を選ぼうとしていた僕に希望をくれたのは、誰よりも愛したきみだった。
「悔しいけどね、優太のこれからは、優太を幸せにしてくれる優しい人に委ねるよ。だからね、優太。もし私たちふたりがもう一度生まれ変われたなら、この世に生を受けることができたなら。そのときは優太の一生を、私にくれないかな」
悲しげに唇をきゅうと結んだゆりあ。
ゆりあはばかだなあ、そんなの、言われなくてもそうするに決まってる。
だって愛しいきみのお願いなんだから。
そう心のなかで思いながら、不安そうに揺れる瞳に僕は笑う。
愛しさを込めて、きみに僕の愛が伝わるように。
「当たり前じゃないか。僕はきみのこと、何よりも大切に思っているんだから。ゆりあと僕がまた会える日がきたならば、僕はもうきみを離さないから。二度ときみを離さないから」
そうして、僕はきみの体を抱きしめた。