───ゆりあの話はこうだった。
亡くなる直前、ゆりあはひたすらに白い景色を見ていた。
どこを見ても真っ白な世界、何もない世界。
その景色を見ながらゆりあは、私は天国に行けるのだろうかと呆然と思っていたらしい。
けれどそれからしばらくして、真っ白な世界のなかに映像が浮かび始めた。
それはまるで映画のような作りで、白いスクリーンに映像が映し出されているような、そんな感覚。
始めは、ゆりあの幼少期から。
幼い頃に何度も行った遊園地やお気に入りのキャラクターに抱きついている幼い自分、お母さんとお父さんに優しく頭を撫でてもらっている場面。
それが全て流れ終わると、次は中学、高校とゆりあの思い出が次々と流れ始める。
中学のときの体育祭や文化祭、友人と喧嘩をしたときのこと、受験に受かって涙を流しているところ。
そして、高校生。
僕と出会ったときのこと、僕と付き合い始めたときのこと、僕と行ったひまわり畑、ふたりで初めて唇を重ねたあの瞬間。
ゆりあは場面場面の説明をしながら僕を見て笑う。
私の高校時代の思い出は、ほとんど優太だったんだよと。
それを聞いた僕は恥ずかしくて嬉しくて、けれど少しだけ寂しくて切なくて。
ただ、微笑み返すことしかできなかったんだ。
そして走馬灯というものはここで終わりだと思っていた。
でも、それは違った。
きみはこの後、自分のものではない走馬灯を目にすることになる。
それは確かな記憶、確かな過去。