しばらくの沈黙が続く。
それはふたりで肩を並べているときのような心地よい沈黙ではなく、心が重苦しくなるような固い沈黙だった。
「……優太」
やっと口を開いたかと思えば、小さく笑って、なにかを思い出しているかのように瞳を遠くにさ迷わせたゆりあ。
「なに?」
「これから話すことは、嘘じゃない。全部本当のことだから。信じてほしい、たとえ他の人に理解されないことだとしても、優太だけは信じてほしい」
海はきれいだ。星も月も、果てしなくきれいだ。
そして今僕を懸命に見つめるきみの瞳も、とてもきれいな色をしている。
世界がきれいだからきみもこんなにもきれいなのか、それともきみがきれいだから世界もこんなにもきれいなのか。
僕はゆりあと目を合わせると、微笑み頷く。
「信じるよ」
僕に信じてほしいというのなら、僕は信じよう。
たとえそれがどんなに不可思議な話でも、現実的にはあり得ないほどおかしな話でも、ゆりあの言うことは全て信じる。
「僕はゆりあのこと、全て信じてる」
きっとそれが、僕の役目。
今不安を感じているであろうきみのためにできること。
「……ありがとう、優太」
また涙をこぼしそうになりながら微笑んだきみに、僕のこの思いがちゃんと届いたのかは分からないけれど、それでも今は、今だけは届いていると信じるから。
僕が信じているように、きみも僕を信じて。
「あのね──」
星明かりが降るこの海辺で、ゆりあは自分が遭遇した不思議な体験について話してくれた。