星々も海に色を落として、海が幻想的にきらきらと輝いている。
ゆりあは、亡くなるそのとき何を見たの?
命は自分だけのものではないと思えるほどの何に遭遇したのだろう。
謎だらけだ。僕にはさっぱり分からない。
だからきみの話をきちんと聞こうと思う。
僕が目線を上げると、ゆりあは伏せていた睫毛をゆっくりと上げ、真剣な顔で僕を見つめた。
「走馬灯って、知ってる?」
「走馬灯、どこかで聞いたことある」
「私ね、亡くなる直前、その走馬灯っていうのを見たの。だけどその走馬灯は、私が思っていた走馬灯とは違った」
──走馬灯。
僕も聞いたことはある。
過去の体験や今まで生きてきた人生の記憶が、死ぬ直前に頭によみがえると、なにかのバラエティー番組で放送していたような気がする。
ゆりあはその走馬灯を実際に見たと言うのだろうか。
けれど、思っていた走馬灯と違うとはどういうことか。
「私が見た走馬灯は、私だけの記憶ではなかった」
僕をとらえたゆりあの瞳は真剣そのもので。
疑っていたわけではないけれど、決して嘘を言っているようにはとても思えなかった。
「自分ではない他の人の記憶も、きみは見たの?」
ゆりあは小さく頷く。
その拍子に風が強く吹いて、波の音が一層大きくなったようなそんな感じがした。