よみがえったのは、ゆりあを亡くしてから泣いてばかりだった僕。


毎日に絶望してどん底の日々を生きていた僕。


そして、ゆりあにもう一度会えるのなら、どんな方法でもいい。


たとえそれが世間一般でいう命を無駄にするということに繋がる行為だとしても、ゆりあに会えるのなら、ゆりあの笑顔が見えるのなら。


僕はどんなことだってすると思っていたあの頃の気持ち。


「優太が好きだから」


もう一度繰り返された言葉が、僕の胸に素直にストンと落ちる。


「私は優太が誰よりも好きだから。優太に生きることをやめてほしくなかった。自分の意思で、死を選んでほしくなかったの」


涙を流しながらきみが僕を見る。


必死な瞳が僕を見つめる。


ゆりあはそっと目を伏せると、言葉を紡いだ。


「ねえ、優太。生きていることって、奇跡だと思わない……?」


どこかついさっきも聞いた台詞をまた放つきみに、姿勢をただす。


ゆりあの声色から、きっとこれからとても大切なことを話そうとしているようなそんな気がしたから。


「優太は、命って誰のものだと思う?」


突然投げかけられた問いに言葉を詰まらせる。


命は誰のもの?


そんなの、決まっているじゃないか。


命は自分が生きているという証。


「命は、僕のもの。生きている自分のものでしょ?」

「やっぱり、そう思うんだね」


僕の出した答えにゆりあは微笑むと、すうっと息を吸ってそれからはあっと吐き出した。


「……違うの?ゆりあはそうは思わない?」

「私もね、前まではそう思ってた。亡くなってしまうまで、ちょうど今から一ヶ月前まではね」

「一ヶ月前……?」

「そう。亡くなる前までは、優太と同じように思ってたの。自分の命は自分だけのものであって、他の誰のものでもないって」


月の明かりがきみの伏せた睫毛に影をおとす。