僕は、ゆりあのことが何も分からなくなっていた。
どうして急にそんなことを言い出すのか、どうしてそんなに悲しそうに泣いているのか。
僕はやっぱり、何も知らないのかもしれない。
知ったようなふりをして、ゆりあのことを、大好きなきみのことを、何も分かっていなかったのかもしれない。
───だって僕は知らない。
きみがこんなにもきれいに涙を流すことも、きみがこんなにも悲しそうな顔をして笑うことも、知らないよ。
いつの間にこんなに大人になったのだろう。
いつの間に、きみはこんなにも大人びた笑みを見せるようになった?
まだ今の状況を理解していない僕に、ゆりあは言う。
「優太は優しい、だから私の話、聞いてくれるよね?」
……いじっぱりでわがままで素直じゃないきみ。
だけど誰よりも優しくて時に甘えたがりなきみ。
そんなきみは、美しいほど残酷だ。
残酷だけれど、そのなかに優しさが見える。
本当にたちが悪いよ、そんな言い方をされたら、僕は黙って頷くしかできないじゃないか。
僕はきみが大好きなんだから。
「優太、私の話、聞いてくれる?」
僕は頷いた。
涙を流しているきみを見つめて、そっと一回。
そうしたらゆりあは安心したようににこりと笑って、一言一言を喉の奥から絞り出すように話し始めた。