きみは僕のことをよく知っている。


僕がどうすれば頷いてくれるのか、知っている。


けれどそれと同じように僕も知っているんだ。


ゆりあはこんなとき、意地でも折れてくれないって。


わがままでいじっぱりなきみは、きっと僕が頷くまで永遠に繰り返すのだろう。


“優太、お願い”


と、僕がゆりあの言葉に頷くときまで、この言葉を繰り返す。


きみが僕のことを知っているように、僕もきみのことを知っている。


「じゃあ、やろっか、線香花火。優太はお願い事決めた?私へのお願い事」

「僕は、」


僕は言葉を詰まらせた。


思わず出かかった言葉を喉で防ぐため。


本当の僕のお願い事は、──きみとずっと一緒にいること。


このまま時が止まればいい、ふたりだけの世界で生きていければいい。


ふたりが決して離れることのないように、いつだってきみの温もりをそばで感じられるように、ずっときみとふたりでいたい。


……けれどね、きっとこの願いはきみを困らせてしまうから。



たとえば本当にきみとふたりで、これからもずっと一緒にいることができるようになったとしても、ゆりあは多分それを望まない。


だってきみは、誰よりも優しい。


僕の人生を縛りたくないと、自分といることで僕のこれからをなくしたくないと、そう思っているんでしょ?


だから、もし僕の線香花火が最後まで残ったなら。


僕はきみの、幸せを願おう。


僕の願いは───


「……優太?」


闇のなかに響くきみの声に肩を揺らす僕。