恥ずかしい、嬉しい、寂しい、切ない。──泣きたい。
このどれにも当てはまりそうな矛盾したどうしようもできない気持ちを抱えた僕は、それがきみに伝わってしまわないようにゆりあから目をそらす。
「最後の花火、しようか?」
今の感情を無理やり振り切るように残っていた花火を指差しながら口角を持ち上げる僕は、ゆりあからはどんな風に見えているのだろう。
微笑んだ僕に、ゆりあも微笑み返してくれる。
「そうだね、最後の花火。これが最後かあ。なんかちょっと寂しいかも」
寂しそうに笑うゆりあに、ズキッと痛む心臓。
──また、できるよ。
なんて、叶うはずのない無責任なことを簡単に言うこともできなくて、何も言えない、何を言っていいのか分からない僕は、曖昧に微笑んで眉を下げた。
砂浜に腰かけた僕たちの目の前には、ふたつの線香花火。
僕らはそれをひとつずつ持つと、顔を見合わせて笑う。
「じゃあ──」
火をつけるね、とチャッカマンを持つ人差し指に力を込めようとしたそのとき、ゆりあがねえ、と僕の行動を止めた。
ゆりあは目を細めて、瞳の奥を僅かに揺らしながら首を傾げる。
ゆりあの黒髪が、肩からさらりとこぼれ落ちた。
「勝負しない?」
「……勝負?」
持ちかけられた言葉に目を丸くする僕。