──きみがその気なら、僕もやってやろうじゃないか。


きみが僕の名前を叫び、愛の言葉を叫んでくれるのなら、僕も同じように叫ぼう。


きみに伝われ、僕の思いが全て、こぼれることなく。


すう、と息を吸う。


きみとつながっている左手に、優しく力を込める。


「ゆりあーーー」


目を瞑り、全身の神経を喉に集める。


この世界に吹く全ての風も、空も、海も、星も。


世界を照らす月明かりでさえも、世界に存在する全てのものを僕の味方にして。


声に、捧ぐ。


「僕もーーー」


きみの指先が微かに震えた。


「きみが世界で一番、大好きだーーー」


全てを味方にした僕の声は風に乗り、空を渡り、海を越え、星のように輝きを放ち、下弦の月明かりの中に吸い込まれ消えていった。


それと同時に終わりを告げる花火。


火の粉はもう完全に勢いを失い、そして止んだ。


静まり返る砂浜。


耳を澄まして聞こえるのは、きみの微かな息遣いだけ。


「……優太、ありがとう」


しばらくの沈黙のあと、ゆりあが僕を見つめながら言う。


「優太の気持ち、伝わったよ。痛いほど伝わった。まさか優太も言ってくれるなんて思わなかったなあ」

「ゆりあが言ってくれたから。その気持ちが嬉しかったから、僕もって。ね?」

「ふふ、真面目な優太らしいね。本当、何度も言ってるけどありがとう」


そう言って、ゆりあは微笑んだ。


──なんだよ、急に。


僕が恥ずかしくなるようなことを、寂しくなるようなことを、じわりと泣きそうになることを言って。