そうだ、今日はこれをやるためにまたここにきたのだ。
ゆりあが僕としたいと言った、最後の願い事。
きっと僕が叶えてあげられるわがままなきみの願い事は、あとこれだけ。
「ね、優太。開けようよ」
考え事をしている間もゆりあは子どものようにはしゃいでいる。
無邪気なその姿は愛らしくて、可愛く思える。
「これがゆりあのね。そして、こっちが僕の。これは最後にする吹き出し花火」
袋から手持ち花火セットを一セットゆりあに渡し、もう一セットは自分へ、吹き出し花火はもとの袋へいったん戻す。
「わあ、すごく楽しそう。早くしたいよ、優太、火、はやく火つけよ」
まだ花火をしていないのに、楽しそうな笑い声が隣から聞こえた。
「はいはい、ゆりあ慌てないで大丈夫だから。慌てて火傷したら大変だからさ。火は僕がつけるよ。これは男の仕事」
「……なんか優太、お父さんみたい。大事な娘を必死に守るお父さん」
「何言ってるの。僕はゆりあの恋人だよ。お父さんじゃない。大切な恋人を守る、きみの彼氏」
そう言えば、大人しくなったきみ。
でもこの無言は怖くない。
何回も言うけどね、僕の大好きなきみはきっと照れてるだけだと思うから。