それに過去で時間が止まっていたならば、僕たちがこうして出会い恋に落ちることもなかったかもしれないから。
「優太、あのね」
ふいに、きみが僕の手を取り名前を呼んだ。
僕は顔だけをきみのほうへ向ける。
波が揺れる音が微かに聞こえている。
「3時間は、180分だよ。180分も、私たちは一緒にいられるの。そう考えたらね、寂しくないでしょう?」
急な言葉に驚く。
僕の不安や寂しさがゆりあに伝わってしまったのだろう。
情けないなあ、弱いなあと反省しながらも、僕は微笑んで頷く。
「本当だね。分に換算してみると、より長い時間一緒にいられるような気がする」
「でしょ?私の考え方、さすがだね」
「ゆりあ、それ自分で言う?そこはさ、得意気になるところじゃないよ」
ゆりあはコイのようにぷくっと頬を膨らませると、僕の肩をつんと人差し指でつつく。
「そこは褒めるとこだよ。優太は分かってないなあ」
月明かりの下、ゆりあの瞳が僕を捕らえる。
ごめん、と笑いながら謝った僕を見たゆりあは、仕方がないねと寄っていた眉をもとの位置に戻すと、僕が抱えたままの袋を指差して目尻を垂らした。
「そろそろこれ、やろう?私、ずっとやりたかったの」
きみが嬉しそうに指差したのは、観覧車に乗る前に買った花火の入った袋。