観覧車を満喫したあとはデパートの一角にあるレストランで夕食を済ませ、空いていたお腹を満たした。


他愛ない話をしながら食べるゆりあとの夕食はとても楽しくて、お腹だけでなく心も満たされる。


パンケーキを食べた昼と同じように、部屋は個室にしてもらった。


ゆりあが何の心配もなくリラックスした時間を過ごせるように。


そして午後9時を過ぎた頃、僕たちはようやくふたりが再会を果たした海辺へと戻ってきた。


「夜の海もやっぱりいつ見てもきれいだなあ」


両手をぐんと伸ばして、息をすうっと吸い込んで、きみは涼しそうな声で言う。


僕たちを照らすのは砂浜に建っている街灯と、空に浮かぶわずかな月明かりのみ。


さらりと流れる風は生暖かくて僕の体をじとりとしめらせたけれど、それでも昼間よりは格段にましだ。


街灯の明かりには、吸い寄せられるように集まった虫たちがゆらゆらと飛んでいた。


「誰もいないね」


辺りを見渡したきみに、僕も続ける。


「この時間だからね。もう9時。いい子はみんな寝る時間だよ」

「あ、じゃあ優太はいい子じゃないんだ。やーい、悪い子な優太くん」

「ちょ、ゆりあ黙って」


ゆりあの口を片手で塞ぐふりをする。