その言葉は、僕の心を満たすには十分すぎるものだった。


「……ゆりあ」

「なに?」


ずっと気になっていたことを僕は聞く。


「あと24時間後、きみはどうなるの?」

「それは……」


言いにくそうに彼女が俯く。


「……教えて、ゆりあ」


しばらくの沈黙が流れたあと、ゆりあは再び僕を見上げて重々しく口を開いた。


「……私は、消えちゃうよ」


なんとなく分かってはいたけど、鼻の奥がツンとした。


きみが悲しそうに笑って、海のようなブルーの僕のワイシャツを弱々しく掴む。


「だから、優太」


僕を見つめるまっすぐな潤んだ瞳と、わなわなと微かに震える唇、ゆりあの全てから目をそらすことができない。


まるで、僕たちの周りの世界そのものが止まったような、そんな感覚。


「私がこの世界から消えてしまうまで、隣にいてほしい」


なにかに懇願するような言い方だった。


この世界から消えてしまうまで、なんて悲しいこと言わないでほしい。


そんなお願いされなくても、僕はずっときみの隣にいるのに。


「あと24時間後、私がいなくなってしまうとき、お互いがお互いに会えてよかったとそう思える、そんな一日にしたい」


ゆりあは僕に言った。


その眼差しからゆりあの思いが痛いほどに伝わってきて思わず空を仰ぐと、そこにはきれいなかたちをした三日月があって。