いつもわたしが雅人の隣だったのに。雅人が笑いかけてくれるのはいつもわたしだったのに。何度も雅人を笑顔にしてきたのに。なのに、今は町田さんが隣にいる。幸せそうな笑顔を、雅人は町田さんに向ける。
思わず、はあ、と深い溜め息をついてしまう。すると賢に
「こんないい天気の日に陰気な顔やめろよ」
と文句を言われてしまった。
「さっさと雅人に告白すればよかったのに」
「……っな、そ、んな……」
こんな場所でそんなことを! と誰かに聞かれていないだろうかと不自然にキョロキョロ見渡したけれど、幸い誰もわたしたちには気を止めた様子はなかった。真知は賢に同意して「ほんとだよー」と笑っている。
「そういうんじゃ、ないし」
「だったら、いい加減諦めて応援してやれよ」
正論過ぎて、文句を返すことが出来ない。
雅人に抱くこの気持ちが、恋愛感情としての“好き”なのかは、今もよくわからない。昔からずっと雅人はわたしにとっての特別だった。雅人の顔を見るだけで毎日幸せで、雅人が優しくしてくれると胸があたたかくなった。笑顔を見るとわたしも笑顔になったし、泣いていればわたしも悲しくなった。
気がつけば好きだなあって思っていた。それはすごく自然なことだったと思う。今も、雅人のことは好きだ。でも、恋人同士になりたいとか、そういうのとは、ちょっと違う気がする。
「ただ……雅人はわたしのそばにいてくれると思ってたから……」
雅人も、同じ気持ちを抱いてくれていると信じていた。なのに、今では町田さんの隣が雅人の定位置になってしまっている。
「ヤキモチだろ」
「……そうだよ」
ストレートに言われてしまい、渋々頷いた。
賢の言うように、嫉妬を抱いているのは事実だ。
雅人と付き合いだしてから、彼女と挨拶をしたけれど、それだけだ。町田さんが本当はどんな子なのか、話したことはないからわからない。でも、わかりたいとも思わない。この先も、きっと、ずーっと、話すことなんてない。話したくない。そう思っている。
噂でしか知らないくせに、こんなふうに思ってしまう自分がひどくいやだ。でも、噂だけが原因じゃない。雅人と付き合う前は、町田さんのことをなんとも思っていなかった。雅人と付き合っているから——わたしは彼女が嫌いなんだ。
そう、町田さんのことが、嫌いだ。
雅人のなにも知らないくせに、雅人をわたしから奪った町田さんが。雅人を独り占めする、彼女という存在が。
彼女を見るたびに嫉妬と苛立ちで心のなかがぐちゃぐちゃでめちゃくちゃになってしまう。
でも、わたしは多分、相手が誰であっても受け入れることはできなかった。
思わず、はあ、と深い溜め息をついてしまう。すると賢に
「こんないい天気の日に陰気な顔やめろよ」
と文句を言われてしまった。
「さっさと雅人に告白すればよかったのに」
「……っな、そ、んな……」
こんな場所でそんなことを! と誰かに聞かれていないだろうかと不自然にキョロキョロ見渡したけれど、幸い誰もわたしたちには気を止めた様子はなかった。真知は賢に同意して「ほんとだよー」と笑っている。
「そういうんじゃ、ないし」
「だったら、いい加減諦めて応援してやれよ」
正論過ぎて、文句を返すことが出来ない。
雅人に抱くこの気持ちが、恋愛感情としての“好き”なのかは、今もよくわからない。昔からずっと雅人はわたしにとっての特別だった。雅人の顔を見るだけで毎日幸せで、雅人が優しくしてくれると胸があたたかくなった。笑顔を見るとわたしも笑顔になったし、泣いていればわたしも悲しくなった。
気がつけば好きだなあって思っていた。それはすごく自然なことだったと思う。今も、雅人のことは好きだ。でも、恋人同士になりたいとか、そういうのとは、ちょっと違う気がする。
「ただ……雅人はわたしのそばにいてくれると思ってたから……」
雅人も、同じ気持ちを抱いてくれていると信じていた。なのに、今では町田さんの隣が雅人の定位置になってしまっている。
「ヤキモチだろ」
「……そうだよ」
ストレートに言われてしまい、渋々頷いた。
賢の言うように、嫉妬を抱いているのは事実だ。
雅人と付き合いだしてから、彼女と挨拶をしたけれど、それだけだ。町田さんが本当はどんな子なのか、話したことはないからわからない。でも、わかりたいとも思わない。この先も、きっと、ずーっと、話すことなんてない。話したくない。そう思っている。
噂でしか知らないくせに、こんなふうに思ってしまう自分がひどくいやだ。でも、噂だけが原因じゃない。雅人と付き合う前は、町田さんのことをなんとも思っていなかった。雅人と付き合っているから——わたしは彼女が嫌いなんだ。
そう、町田さんのことが、嫌いだ。
雅人のなにも知らないくせに、雅人をわたしから奪った町田さんが。雅人を独り占めする、彼女という存在が。
彼女を見るたびに嫉妬と苛立ちで心のなかがぐちゃぐちゃでめちゃくちゃになってしまう。
でも、わたしは多分、相手が誰であっても受け入れることはできなかった。